当園について
摂食・嚥下に対しての
当園の考えと取り組み
摂食・嚥下に対しての当園の考えと取り組み
考え
2019年2月に、短期入所サービス利用者様が、当園スタッフによる食事介助中に食事を喉に詰まらせてお亡くなりになるという事故が発生してしまいました。
「患者さん・利用者さんの豊かな日常生活を保障し、医療チームが支える。」を基本理念とし利用者様の安心となるべく運営しております当園にとって、事故を起こしてしまったことは本当に申し訳なく思っております。
お亡くなりになりました利用者様のご冥福を心からお祈りするとともに、当園を信頼いただいておりました全ての利用者様、そのご家族の皆様に、深くお詫び申し上げます。
今回の事故に関しては、園内調査にて原因を下記4点としました。
- 適切でない介助方法だった。
- 食事介助前に、食事介助方法(入所時のご家族からの聞き取り内容)の確認を怠ってしまった。
- 介助に使用したスプーンの大きさが、入所時のご家族からの聞き取り内容と異なるものであった。
- 利用者さんの機嫌、表情等が食事開始に適さないものであったにも関わらず、食事提供および食事介助が行われた。
- 適切でない介助方法を見た職員が、介助者を注意することができなかった。
- 当日に提供されたチーズ粉拭き芋の粘性が、同じ食形態の他のメニューと比べ高かった。
- 緊急時の初動動作における研修訓練が不十分だった。
さらに、原因に対して下記対策を立案しております。
- 原因1の対策について
- 食事提供の環境の見直しを行う。
- 希望される利用者さんにのみ使用していた大スプーンは、間違い・不適切な使用の原因となるため、原則使用を禁止する。(現在、大スプーンを使用している、または使用を希望されている利用者さんに対しては、言語聴覚士が再評価し、ご家族合意のもとスプーンの大きさを変更する。)
- 食事介助方法について、ご家族からの聞き取り体制を強化する。
- 短期入所に関して、利用初日の聞き取り内容を見直す。(摂食カード項目の明確化、細分化を図る。)
- 短期入所と通所の場合にも、現在長期入所者さんに対して実施している方法と同様に、初回利用の食事時には、看護・介護職員だけでなく、言語聴覚士も必ず同席、可能な限りご家族にも同席していただいて、食事摂取方法について確認・評価を行う。
- 食事介助を行う全ての職員が、利用者さんひとりひとりに合った正しい食事介助方法で行うことができる仕組みを構築する。
- 多職種にて確認・評価を行い、利用者さんひとりひとりに個別の「摂食カード」を作成する。
- 職員は、食事介助を行う際、食事介助を行う利用者さんの「摂食カード」を確認し、食事介助中も傍らにおきながら食事介助を実施する。
- 職員研修体制を強化する。
- 重症心身障害児者の食事介助に関する職員研修会を年2回実施する。
- 食事提供の環境の見直しを行う。
- 原因2の対策について
- 食事介助を行う全ての職員が、互いに注意しあうことができるようにするため、介助方法の統一を行う。
- 多職種にて確認・評価を行い、利用者さん一人ひとりに個別の「摂食カード」を作成する。
- 職員は、食事介助を行う際、食事介助を行う利用者さんの「摂食カード」を確認し、食事介助中も傍らにおきながら食事介助を実施する。
- 食事介助を行う全ての職員が、互いに注意しあうことができるようにするため、介助方法の統一を行う。
- 原因3の対策について
- 検食の体制を強化する。
- ペースト食に関して毎食、担当者による検食を実施する。
- 食形態検討プロジェクトチームを立ち上げ、重症心身障害児(者)の摂食嚥下機能に合わせた、食事形態の適正化を図る。
- 検食の体制を強化する。
- 原因4の対策について
- 誤嚥時の対応マニュアルを作成する。
- 誤嚥時の対応についての研修及び訓練を年1回実施する。
- コードブルーに関する実地訓練を年2回実施する。
今後、決してこのようなことは起こさないという固い決意を持ち、摂食・嚥下に関する当園の今までの考えを見直し、一層の医療安全対策を講じ、心から安心して当園のサービスを利用していただくことができるよう努めてまいります。
摂食・嚥下に関する取り組み
- 「摂食カード」の作成について
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重症心身障害の利用者さんは、筋の不協調(筋緊張、筋拘縮など)、形態発育の不調和(口の形、歯並びなど)などからなる個別な身体状況により、一人ひとり摂食・嚥下に関する感覚・能力が異なります。
100人いれば100通りの食事介助方法で行う必要があると言っても過言ではありません。一人ひとりの個別性をしっかりと認識し、その方にあった食形態で食事を提供し、その方にあった方法、環境で介助を行うことが大事です。
そこで当園では、利用者さんに対して、ご家族からご自宅での食事の様子、方法等に関するヒアリングを徹底的に行い、それをもとに医師、リハビリスタッフ、看護師、介護スタッフなどによる評価を実施しています。
さらに、その内容を介助を行う全ての職員が理解し、実践できるように、利用者さん一人ひとりの「摂食カード」を作成することに力を入れています。当園の職員は、食事介助を行う際、必ず「摂食カード」を手元におきながら食事介助を行うことをルールとして実施しております。
その方の個別性や正しい介助方法を毎回確認することができるため、どの職員が食事介助に入っても安全に安心して食事時間を楽しんでいただくことができると考えております。
摂食カードの特徴- どの職員も見てわかるように、写真を添付
- 食事時の車いすのリクライニング角度や食事にかけるべき時間も細かく記載
- 介助に必要な情報(食形態、使用するスプーンの大きさ、一口量、中止判断等)を漏れなく記載することはもちろん、要望や嗜好物、食事が進まない際の対応なども記載
その他利用開始時、利用後状況が変化した都度、担当医師・リハビリ職員・看護師・介護職員で評価し内容更新しています。
- 食事介助に関する職員研修について
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重症心身障害をお持ちの方の食事介助は、その方の個別性をしっかりと認識し、その方にあった食形態、方法、環境で行うことが大事です。
そのためには、重症心身障害とはどのような障害なのか、どのような身体的特徴があるのか、合併する疾患とはどのようなものがあるのか、利用者さんをさらに知るために、介助者は深く学ぶ必要があると考えております。
当園では、リハビリテーション部が主体となり、重症心身障害についての内容から、具体的な食事に関する介助方法、姿勢等の環境設定を学ぶための職員研修を年に2回定期的に実施しております。
- 食形態について
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楽しく安全な食事について、食形態はとても重要なことです。特に、摂食・嚥下に困難さを抱える重症心身障害をお持ちの方にとっては、どのような食形態が合っているのか、毎回の食事でのご様子等も含めて検討を重ねていく必要があると考えています。
2019年度、医師、管理栄養士、リハビリスタッフが中心となり食形態検討プロジェクトチームを立ち上げました。
十分な摂食嚥下機能を獲得していない重症心身障害の方に対して、さまざまな学術資料、園の利用者さん一人ひとりの普段のご様子を参考に検討を重ね、丸一年かけてベースとなる食形態の見直しを図りました。変更した形態に合わせて献立て内容も見直し、美味しく楽しんでいただける味・匂いにもこだわっております。
医療安全に関する取り組み
- 誤嚥時の対応マニュアルの作成について
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重症心身障害の方にとって誤嚥は、すぐさま命に直結する問題です。もしも、利用者様の食事介助中、誤嚥を疑う状況となってしまったら。その際に介助を行っている職員、まわりの職員はどのように対応するべきか。いざという際にどのように動くべきかをまとめたマニュアルを医師、看護師中心に作成いたしました。
初動から、救命処置・救急搬送に至るまで、業務フローの整理を行い、全ての職員にわかりやすいように内容をまとめました。
- 誤嚥時の対応についての研修及び訓練について
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誤嚥はなぜ起こるのか、早急に誤嚥と判断するためには何が必要か、いざというときに対応マニュアル通りに対応することができるのか、研修を通して学んだうえ、訓練を行う必要があります。
当園では、年に1度、誤嚥時の対応についての研修と訓練を行っております。
訓練では、実際にハイムリッヒ法など実践し、いざという際に行うことができることを主眼として行っています。
- コードブルーに関する実地訓練について
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コードブルーとは、利用者さんの容態の急変などの緊急事態が発生した場合に用いられる救急コールのことです。
全館放送によりコールされ、その際には担当に関わらず手が空いている医師、看護師が至急集合を行うこととなっております。利用者さんの命に関わることですので、1秒でも早くコールし集合することが求められます。
当園では、年に2回コードブルーの訓練を行っております。その際は、より実践に近い形をとるために、職員への事前通知は行わず実施しております。
- AED使用に関する実地訓練について
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自動体外式除細動器とは突然心臓が正常に拍動できなくなった心停止状態の心臓に対して電気ショックを行い、心臓を正常なリズムに戻すための医療機器です。
当園は夜間帯も含めて医師が常駐しておりますが、心肺停止は一刻を争うことであるため、いざというときのためにAEDが常備されております。
しかし、AEDが常備されているだけでは意味がないことは言うまでもありません。いざというときに、全ての職員が実施することができることが肝心です。
当園では、年に1度AEDの実施訓練を行っております。