以下に、第3回日本老年薬学会学術大会(2019年5月、名古屋)にて、発表予定の演題抄録(学会未採択)を紹介いたします。
多剤併用は腎機能低下のリスクの1つになり得る
○山田 誠1、河合 柚佳里1,2、市地 智子2、瀧田 大輔2、秋田 美樹2
1 一般財団法人多摩緑成会 緑成会整育園・薬剤部
2 一般財団法人多摩緑成会 緑成会病院・薬剤部
【目的】高齢者等における多剤併用は、様々な有害事象の発生や薬剤費の高騰による社会問題を引き起こしている。最近、高齢者1人あたりの併用薬剤数が6剤以上になると、有害事象発生率が有意に増加することの報告がなされた。また、腎臓は多くの薬剤代謝物の排泄に寄与することから、多剤併用の腎機能への影響は容易に想像できる。しかしながら、併用薬剤数と腎機能との関連性を検討した報告はないのが現状である。ここでは、多剤併用による腎機能へ及ぼす影響について、検討することを目的とした。
【方法】当園入所中の重症心身障害者のうち、2017年7月~2018年1月において血清クレアチニン値を含む血液検査を実施された20~40歳代の利用者で、かつ主薬の分子量が明確な内服薬のみの加療を受け、腎疾患の既往のない23名(男性11名、女性12名)を対象とした。腎機能の指標は、推算糸球体濾過量(eGFR)を採用し、横軸に併用薬剤数を縦軸にeGFRをとった分散図から、両者の相関性を調べた。
【結果】年代別や性別による併用薬剤数とeGFRに有意な差を認めなかったことから、すべての症例を対象とした分散図を作成すると、逆相関性(相関係数:-0.506)を示した。
【考察】今回対象とした症例については生理的腎機能が維持されていると考えると、このeGFR低下は薬剤性に生じた可能性が強いと考えられた。また、既報での有害事象発生率の増加が不連続性であるのに対し、eGFRの低下は連続性であることが示唆された。現在、同法人緑成会病院薬剤部と連携し、高齢者を対象に多剤併用と腎機能との関連性を調査中である。ここでの報告が、高齢者等の適正な併用薬剤数のヒントとなることを期待したい。
【結論】多剤併用は腎機能低下のリスクの1つになり得る。
ご興味のある方は、薬剤部までご連絡ください。(文責:薬剤部・山田)